スーパースターに思いを寄せて
野球どハマり人生を歩み出してから14年目になる。小中学生の頃のスターたちが引退して、解説者やコーチになることが増えてきた。
そんな中、今年も変わらず、というよりプロ13年目を迎えた今、過去最高の成績を叩き出している選手がいる。
私の野球どハマり人生の原点、坂本勇人だ。
今のプロ野球選手の中では、最も「スーパースター」に近い選手ではないだろうか。以前、ある記事で「スーパースターの条件とは『見ているファンの人生の時間軸になれること』だと思う」と書いている方がいた。少なくとも私にとって、坂本勇人とはそういう選手だ。
【小学校時代】
1年目(07年):プロ初安打は延長戦での決勝打
2年目(08年):全試合スタメン(高卒2年目では史上3人目)
3年目(09年):打率.306(高卒3年目以内での3割は史上11人目)
母の影響で巨人ファンだった頃、ぼーっと中継を見ていたらひょろひょろの若い選手が出てきた。「年の差が一桁のプロ野球選手、初めて見た…!」これが、応援しようと思った最初のきっかけだ。10代ながら開幕スタメンを勝ち取った08年、大雨の開幕神宮にいたことは、今でも界隈の人に自慢している。
それからは塾のテストの成績が良ければ試合を見に行ける約束だったので、坂本の活躍が全てのモチベーションだった。でも私が見にいく日はいつも打ってくれなかった。
【中学時代】
4年目(10年):31本塁打(高卒4年目以内では史上8人目)
5年目(11年):全試合出場
6年目(12年):打率.311、最多安打賞(初タイトル)
お小遣いで観戦に行くのが楽しみになった中学時代。相変わらず、現地参戦日は全然打ってくれなかった。
初めてタイトルを獲得した時は塁上で涙する姿にもらい泣き。絶対泣いてるのに「目にゴミが入っただけ」とごまかすのが最高に好きだなと思った。
【高校時代】
7年目(13年):打率.265
8年目(14年):打率.279
9年目(15年):打率.269、3年間「普通の選手」に止まる
高校時代は西川遥輝に浮気した。そのままファイターズファンになって、あまり巨人戦を見なくなった。
坂本も今までのような圧倒的な活躍は見せなくなった。尻すぼみしていくのかなとちょっと悲しくなった。
それでもやっぱり年に数回は見に行った。高1の夏に見に行った時、いつも打たないのに4安打も打った驚きは忘れられない。
【大学時代】
10年目(16年):打率.344(初の首位打者、ショートではセリーグ史上初)、ゴールデングラブ賞(初)
11年目(17年):通算1500安打達成(史上2番目の年少記録)
12年目(18年):打率.345(キャリアハイ)
大学に入ってから、予想に反して坂本は覚醒した。戻ってきたというよりは、別人になった。
12年までは成績がいいとはいえ好不調の波があって、不調の時は顔や態度に出て、守備でもミスして… みたいな幼さがあって、それが応援したいと思う理由でもあった。
ところがここ最近の坂本は違う。とりあえず1試合に1本は打つ。もし打てなかった日は翌日3本くらい打つ。なんだかんだいつも打つ。去年の秋に見に行った時は、12年間で初めて生でホームランを見たと思ったら、終盤にもう1本打った。今までの12年間なんだったんだろうと思った。
坂本は、いい意味で派手だ。10代から巨人で活躍して、年不相応なお金をもらって、イケメンで。間違いなくもてはやされ、調子にも乗っただろう。酒とか、タバコとか、オンナとか、良くない噂も幾度となく聞いた。本当か嘘か分からないけど、たぶん本当だ。そういう話が出てきてしまうところは正直好きじゃない。
だけど、今なお私が坂本勇人という野球選手を好きでい続ける確固たる理由がある。それは、野球が楽しくて好きなことを、よく態度や言葉で示してくれるからだ。
たぶん去年か一昨年くらいだ。「今でもヒット一本打つのがうれしい」という発言を見た時、あぁ私はこの選手が一生好きだと確信した。
10年以上、毎年100本以上必ずヒットを打っていても、一本打つだけでうれしいなんて、これ以上の発言はあるだろうか。スター軍団の中心を担い続けてる選手だ。重圧もあるはずだ。ただそれを上回るのは、純粋に野球が好きという気持ちなんだろう。……尊すぎる。
「立場が人を作る」とよく言うが、確かに雰囲気も変わった。ベテランに囲まれていた10年前とは違い、主将の肩書きを背負って後輩を率いるようになった。昔は頻繁にあった不調時に感情をあらわにする様子も、最近はあまり見られない。先日、悔しさからベンチを蹴る様子が映され、「これは珍しい」というコメントが多く付いているのを見た時、やっぱり彼は変わったんだな、と感じた。
その翌日、日本ハム戦でのあるシーンが話題になった。
坂本が放ったライトへの大飛球を日本ハム・大田泰示がジャンピングキャッチ。坂本はヒットを1本逃したかたちにはなったが、大田へ向かって脱帽し、敬意を表したのだ。
大田は坂本の2学年後輩で、かつては巨人で共にプレーした存在だ。その関係性があるからこそ、プロ野球ファンの胸を打ったシーンだった。そうやって周りの人や競技への気持ちを表現できる選手は、信頼できる。
これから先、どんな選手になるのかは分からない。もっと突き抜けた伝説を作るのかもしれないし、案外早いうちに退くのかもしれない。
でも私は野球好き人生の始まりを、スーパースター・坂本勇人のファンとして過ごせたことは、すごくラッキーなことだと思うのだ。