閑散とした球場で

常に何かしらの記事を書く日々から解放されて、半年以上が経った。解放という表現を使うのは、その日々が終わった当初は、毎日記事のことを考えなくていいのは多少ラクだと感じていたからだ。

ただ、時が経つと不思議とそうでもなくなる。各競技のシーズンが始まり、後輩たちの書いた記事が上がると、あぁ、私も書きたいなぁとなるものなのだ。

 

そんなわけで久々に、そして継続的に長文を書いてみることにした。目標は週に一本。三日坊主の私にはこのペースでも続くか不安なのだが。

 

 

 

さて、大学スポーツの春先はリーグ戦が行われる競技が多い。激動の2ヶ月を終えた6月は選手にとっても、取材をする私たちにとっても束の間の休息(と同時に、私たちは夏以降の取材遠征に向けて月のほとんどをアルバイトに捧げる期間でもある。全く休んでいる暇はない)。

そんな6月の初めに、今年は野球の早慶戦が行われる。例年は5月末に行われることが多いのだが、スケジュールの関係上、昨年に続き今年も6月開催だ。

 

 

春の早慶戦は両校にとって一大イベントだ。野球部はもちろんだが、一般の学生にとっても。決してサークル内に野球好きが人がほとんどいなかったとしても、なぜか皆で応援するイベントが組まれるのだ。

 


朝8時すぎ。試合開始は13時なのに、外野側の球場外周には既に長蛇の列ができている。例年の来場者は土日共に約3万人。プロ野球並み、あるいはそれ以上の盛況だ。スタンドも通路も売店も球場外周も、大勢の人でてんやわんや。

それなのに私たちの新聞は全然売れない。学生にはまず売れないから、おじさんを狙い撃ち。私たちにとっての早慶戦は、鋼のハートを鍛え、おじさんとの話術を磨くイベントでもある。

 

 

早慶戦東京六大学野球リーグ戦の一節。リーグのルールに則り、先に2勝した方に勝ち点が与えられる。つまり土日を1勝1敗、もしくは引分けの試合が出た場合は、どちらかが2勝を挙げるまで月曜、火曜と試合は続いていくのだ。

ちなみに私の入学以来、春秋6度の早慶戦が行われてきたが、全てで『月曜神宮』に勝負の行方が持ち込まれている(17年秋は日曜が雨天中止となったため)。

 


平日の神宮は土日と打って変わって閑散としている。それもそのはず、授業があるからだろう。

と思うのだが、授業が行われるのは早稲田だけ。対する慶應は「早慶戦がある」という理由で、2限以降が休講になるのだ。でも、慶大生と思しき学生はほぼいない。とにかく閑散としている。

一方、早大生の私は、授業をサボり(いやサボってるわけじゃないけれども)神宮に行くのだが、もちろん新聞は売れない。狙い撃ちするおじさんたちも、既に土日に買っている人がほとんどだ。

 

 

あまりの虚しさに一体私は何をやっているんだとも思うのだが、『月曜神宮』はだんだんとクセになっていく。

 

 

観客は全然いない。でも前方の席に座れ、選手の表情がよく見える。土日のような応援の声量もない。でもその分、選手の声がよく聞こえる。

味方を盛り上げ、相手を煽る。きっと選手は土日も同じように声を出しているのだろうけど、勝負の行方が掛かる3戦目の熱は、土日とは一味違うものがある(私は『月曜神宮』が好きすぎて、先日は月曜の明大vs法大を見に行った。ここまで来ると病気だ)。

 

 

今季は早慶戦を前にして既に明大がリーグ優勝を決めている。つまり今季の早慶戦はいわゆる消化試合だ。

しかし優勝の有無にかかわらず、お互いがお互いには負けてはいけない。事実、どちらの野球部も年間三大目標は「早慶戦優勝、リーグ優勝、日本一」。だからこそ、1勝1敗で迎える『月曜神宮』は、熱い。

 

 

私が早慶戦にこんなに想いを馳せてしまうのは、大前提に野球が好きで、その上で3年間取材をしたからだということは重々承知だ。

でも大学スポーツならではの、一瞬にかける熱をまざまざと見せつけられる月曜の早慶戦は、贔屓目なしに面白いと思う。


もし今年の早慶戦が月曜も行われたら、休講になる慶應生たちも来てみたらいいのに、と思う。無論、私は神宮に行くつもりだ。まあ本当は早稲田が連勝して月曜はないのがベストなのだけど。